ARTICLE

「緊縛」から”SHIBARI”へ。日本発祥の緊縛にエンタメやアート、ファッションの要素を強め新たなカルチャーとして発信~アーティストBENIPEONIAインタビュー~

JPEN
BENIPEONIA主催イベント「DeepRedClub-覚醒-」でのSHIBARI LIVE(2023年2月)

縄などで身体を縛る緊縛。日本ではまだSMなど性的なイメージが強いが、海外ではアートや文化として認識されている。ロープアーティストのHajime Kinoko氏らは、緊縛をアートとして、新たなカルチャーにする波を起こしている。今回、登場するのはHajime Kinoko氏に師事するアーティストBENIPEONIA(ベニ ペオニア)さん。モデルから縛り手、イベントの開催まで手掛ける彼女は従来の緊縛のイメージからポップに昇華させた「SHIBARI」として表現する。ライブやインスタレーションはMICEのコンテンツとして協力可能となったことから話を聞いた。

BENIPEONIAさんと緊縛との出会いは。

BENIPEONIAショークラブで働いていた時にもっと面白いことができるのではないかと思い、様々なジャンルのパフォーマンスを調べていた時期がありまして。自分がいいなと感じるものや、気になるホストが主催するイベントに参加する為に、色んな国へバックパックで3カ月の旅に出ました。そのなかでパリの「クレイジーホース」というナイトクラブ(ショークラブ)に行った時に観たショーに惹かれて、後で調べると「Inspiraition by Japanese culture SHIBARI」と書いてありまして。日本の縛りが世界でこんな風にカッコよく表現されていることに衝撃を受けました。日本に戻ってからHajime Kinokoのところへ行き、自分も縛りを学びたいと門を叩きました。

初めてHajime Kinokoさんの作品を観た時はどんな感想でしたか。

BENIPEONIA最初はInstagramで観ました。日本で縛りというとSMなどのイメージが前に来ますが縄でこんな表現ができるのか、と思ったのが最初の印象です。
2020年にHajime Kinokoがアメリカのデトロイト現代美術館でインスタレーションを発表した時もパフォーマンスモデルとして参加しました。縛りをパブリックな場所でやってたくさんの観客に囲まれる空間は最先端だと感じました。海外ではオープンに捉えていますし、美大の学生やファッションの勉強している人は「緊縛美」を学んでいる人も多く、最近では海外のセレブリティの中でもブームになりつつあります。これから流行るコンテンツとして捉えている人も多くいます。

HajimeKinokoと原宿アートギャラリーStandByのコラボレーションにてパフォーマンスモデルとして出演(写真左)Beyonceの新アルバムの衣装を担当しているNusi Queroとのコラボレーション撮影をLAにて実施(写真右)

BENIPEONIAさんの活動を教えてください。

BENIPEONIA縛り手としてショーをしたり、イベントオーガナイズをするほかにも「自吊り」といって自分で自分を縛るパフォーマンスをしています。世界でも少なくて……数えるほどだと思います。自吊りはじっくり自分を縛っていくものと、空中でくるくると回るようなエアリアルなものの2つのパターンがあって、両方やっています。Hajime Kinoko の主宰する「⼀縄教室」の講師を務める他に、現在は個人で自吊りの講師としてレッスンをしたり来日するアーティストらにSHIBARIを体験してもらうプログラム等も実施しています。

渋谷Contactにて自吊りショー

BENIPEONIAまた2023年2月に主催イベント「DeepRedClub」を渋谷で開催しました。「DeepRedClub」のタイトルは私の名前BENIPEONIAのBENI(紅)からきていて、今後、私がイベントを開催する際の共通のタイトルです。第一回だったので「覚醒」をテーマにパーティーのオーガナイズやショーを作る部分まで全部やりました。

「DeepRedClub」開催の動機は。

BENIPEONIA緊縛は江戸時代に捕縄術として用いられていました。日本には手錠がなかったので縄で縛るようになります。罪人の身分によって縛り方が違ったりします。今も流派がたくさんあって、私は「一縄」というところにいます。緊縛と一言でいっても音楽に色々なジャンルがあるように、緊縛も多様なスタイルがある。日本の伝統な緊縛、現代アート、BDSM、ファッションやインスタレーションなど様々です。そのなかで私は伝統に対して敬意を持ちつつも従来の緊縛とはちょっと違うことをやっていると思っていて。それを表すのに「緊縛」ではなく「SHIBARI」と表現しています。クラシックスタイルの緊縛としてやっていたことをもうちょっとポップに昇華したくて。令和になりSHIBARIがブームになりつつある今どう日本のカルチャーに溶け込んでいくのか、自分で作りたく、このイベントを開催しました。

サイバーロープとサイケデリックなファッションでパーティーの空間を演出

外国人や感度の高い若者が多く集まったそうですね。ダイバーシティを体感できるイベントだったと。

BENIPEONIA日本発祥の文化ですごくクールなのに大きな声で「かっこいい!」と言いにくいとっつきにくさがあると思います。今の若者にこんなにカッコいいものがある事を知ってほしくて、イベントの雰囲気も従来のイメージとは違うものにしました。従来のクラシックスタイルで緊縛好きの人がストリップ劇場に集まるイメージがあります。私はもっと多様なエンターテイメントやカルチャーに携わる若い人が集まる空間にしたくて、場所も新しいカルチャーが生まれ続ける街、渋谷にしました。
ターゲットにしていた層が来てくれて、外国人も多く「ここ東京なの?」という声も聞こえてくるぐらい、インターナショナルな雰囲気で開催できました。それと、みんなお洒落して来てくれたのが嬉しかったです。ナイトアウトするのにしっかりお洒落していく、そういう海外の雰囲気がすごく好きなのでそれと同じような雰囲気を作ることができた。みんなフロアで踊って楽しんでくれていたと思いますし。クリエイター同士が繋がってもらえる場になれば嬉しいです。

縛る上でのこだわりは。

BENIPEONIA自分の中でSHIBARIは「美を与えるもの」という価値観があります。例えば女性が美容室に行って髪を染めたり、メイクしたりする。それと同じ感覚で、縄をかけることで美しくなると思っています。ですので、被虐的とか色に染めるとかそういったSM的な要素は私の表現にはあまりないです。モデルに縄をかけて美しくするというのが一番のポリシーです。縄をかける前よりかけた後の方が美しく。視覚的な部分で言うと縄をかけるとボディラインが補正できるので、ボディラインを美しく作ってあげられる。そして、縛られて体が拘束されると逆に心は解放されていきます。そうすると感性の繊細な部分が滲み出て、それも相まって美しくなると思います。経験するのが一番分かりやすいのですが、体が拘束されて動けなくなると心を開いて、相手に委ねるしかなくなるものです。また、信頼関係が必要なものです。命を預かってやっていますので安全面は配慮しています。

BENIPEONIAさんの強みは。

BENIPEONIAクラシックスタイルの緊縛師と違う部分としては、私はスタイリングや音楽等トータルの演出から拘っています。衣装は私が働いているショップ「ヌードトランプ」から。「ヌードトランプ」はもともと世界中のセレブやアーティスト、日本のクリエイターらが集まる「トランプルーム」というクラブがあり、そのオーナーが手掛けるショップです。アーティストが服を買ったりスタイリスト側がリースしたり、そういった最先端のショップのものでスタイリングするようにしています。

今後の展望は。

BENIPEONIASHIBARIを世の中に広げていく為には、様々なジャンルの人とコラボするのが大事だと思っているので、音楽、映像、ファッションなど様々なプロの人と一緒に発信していきたいです。今は映像作品としてアニメーションとSHIBARIの融合。日本のクールなサブカルという部分でも広げていこうと計画しています。「DeepRedClub」の第2回も6月頃に渋谷で開催予定です。(JAPAN MICE NAVI 編集部)

BENIPEONIA プロフィール

2019年に師匠であるHajime Kinokoのショーモデルをスタート。
2020年 Detroit現代美術館にて700⼈を動員した師であるHajime Kinokoのショーモデルを務める。
2021年 ⾃⾝を縛り吊る「⾃吊り」パフォーマンスを始める。
同年、メキシコのタトゥースタジオにて⾃吊りパフォーマンスを海外初プロデュース。
2021年 世界最先端のArtBaselMiamiSateliteにてショーモデルを務める。テレビ番組で緊縛をプロデュース。
2022年より縛り⼿として学び、世界一の⽣徒数を持つ緊縛の「⼀縄教室」の講師を始める。原宿のアートギャラリーStandByとHajimeKinokoのコラボレーションでビルを縛る⼀員として参加し、外壁に⼈を縛るパフォーマンスでモデルとして出演。
2023年 テレビメディアに緊縛の講師として取材を受け出演。アートイベント「DeepRedClub」を開催。

本サイトからご相談いただけるメニューはこちら

  • BENIPEONIA講演
  • BENIPEONIA SHIBARI LIVE誘致
  • BENIPEONIA SHIBARI インスタレーション実施

ARTICLE RECOMMENDED