
下呂温泉観光協会は2021年9月6日に、いで湯の里ふれあいセンター(下呂市森)で、下呂市、中部電力ミライズ、NTTドコモと「下呂未来創造プロジェクト」の連携協定締結式を実施した。協定式には瀧康洋・下呂温泉観光協会会長、山内登・下呂市長、久村真司・中部電力ミライズ岐阜営業本部長、河内雄輔・NTTドコモ 東海支社 岐阜支店長が出席、協定書を交わした。
タイトル通り日本の観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の中心を目指すという非常に頼もしいフレーズも登場した。協定の内容は、5Gの温泉街への基地局整備、IT化、観光DX化など、いくつかのポイントがあった。
締結式で注目を集めたのは、観光が中心ということで、5GやVR技術を駆使した下呂の観光素材の中で人気が高い花火や下呂温泉まつりをデジタルコンテンツ化するものだった。2021年度オープン予定の「(仮称)下呂市観光交流センター」(下呂市森1075-1 他)での導入が予定されている。

タイトル通りの観光DX化という部分でいえば、私が注目したのは、下呂温泉観光協会が事務局となり地域をリードしている下呂市DMOに関係する宿泊統計の集計や分析のDX化だ。下呂市DMOは地域型DMOの成功モデルとすでに評価されている。その根幹にあるのは宿泊についてのマーケティングだ。日本各地で活動を開始したDMOにとってマーケティングは課題だ。正確で大量のリアルのデータを集め、かつ客観的に分析できなければならない。
下呂で集める宿泊データは細分化され、しかも集計が早い。誘客対策も素早く行われる。それまでの経験は生かされるが、勘やイメージでは判断されない。そして素早く誘客対策を打って成果につなげている。この下呂の宿泊統計について課題となっていたのはアナログ作業であったこと。これをDX化する。特定のスタッフへの作業の集中をこのDX化で解消できる。
同時期に下呂温泉観光協会は「トヨタ生産方式のカイゼン」を導入している。今後の物販の取り扱い開始などもあり事務局の基盤強化を図るためだ。

また、今回の協定で興味深かったことは緩やかではあったが4者が役割を述べたこと。下呂市はDX化について民間との連携や「学ぶ」という表現でヒアリングしていくことが挙げられた。「学ぶ」姿勢は中部電力ミライズからも発言があった。観光や行政の現場からの声を聞き取りDX化していくことは重要だ。観光協会は、観光を通じた地域貢献を掲げており、今回の5Gや観光DX化での住民サービスの向上をアピールした。観光での利活用で市内への5GやDX化が浸透するためだ。
NTTドコモは観光デジタルコンテンツの制作について説明した。中部電力ミライズからは、住民サービスでは教育コンテンツの配信と子どもや高齢者の見守りサービス、オンデマンドバスの自動運転による二次交通の整備、EVバス等によるカーボンニュートラルの実現に加え、防災面で、災害情報の早期の提供や、監視、分析も挙げた。
他にも遠隔地へ向けて物産展の開催、位置情報を利用した多様な観光コンテンツの提供、キャッシュレス決済、NTTドコモのdポイントを活用したキャンペーンなども実施される。この部分はプッシュ型提案が採用されることで観光DX化と見ることが可能だろう。詳細はサービスがスタートすることで明らかになっていく。なぜ5Gやどのあたりが観光DXになるのだということはプロジェクトの検討案である程度は明らかになっている。
今回のプロジェクトでは、下呂市内に観光DX化を進めることで、観光客誘致だけでなく、市内にDX化を浸透させ、住民サービスの向上も図る。
住民サービスの向上だけではコストが問題となる。観光で稼ぐことで、そのコスト負担を減らせる。住民サービスの向上は観光従事者にも還元される。子どもや高齢者の見守りサービスもそうだ。2次交通は観光客だけでなく住民も利用できる。防災は、もちろん観光客と住民の双方に有益だ。
DMOやエコツーリズムで成功を収めてきた下呂温泉観光協会の観光DX化は注目だ。(JAPAN MICE NAVI編集部)
一般社団法人 下呂温泉観光協会
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