
JR四国は5月12日、13日に人気観光列車「四国まんなか千年ものがたり」と瀬戸内国際芸術祭を巡るプレスツアーを開催。瀬戸内国際芸術祭については、こちらの記事で掲載しているので、この記事では「四国まんなか千年ものがたり」を中心に紹介する。全国的にブームとなっている観光列車を活用したMICEについても解説する。
JR四国ではアンパンマン列車や2022年4月に新列車となり2代目がデビューした「伊予灘ものがたり」、高知県を走る「志国土佐 時代(とき)の夜明けのものがたり」などバラエティ豊かな観光列車が走っている。「四国まんなか千年ものがたり」は2022年4月に運行5周年を迎えた人気の観光列車で、香川県の多度津駅~徳島県の大歩危駅を結ぶ。「四季の移ろい」と「日本のたたずまい」を表現した列車で、讃岐平野の美しい里山や大自然が生んだ渓谷美を楽しみながら、四国の「真ん中」を走り千年の歴史に思いを馳せる旅を楽しむことができる。昔徳島の人は桃の節句になるとお弁当を持って近くの山や浜で1日を過ごす「遊山(ゆさん)」を楽しんでいたそうで、観光、行楽、遠足とは少し異なる情緒的な響きのある「遊山」を現代の人にも楽しんでもらおうと作られた。香川、徳島の地元食材にこだわった料理を味わいながら、大人の洒落た小旅行を気軽に体験できる人気の観光列車だ。
「日本のたたずまい」「四季の移ろい」をイメージした車両デザイン
デザインコンセプトは「日本のたたずまい」。古民家をモチーフにした木の温もりが感じられる空間。座席はゆったりとしたソファー席で和と洋の二元対比に。1号車「春萌(はるあかり)の章」は、新緑色のソファー、3号車「秋彩(あきみのり)の章」も、1号車とほぼ同じ座席レイアウトで、紅葉色のソファーに彩られたインテリアとなっている。2号車は座席レイアウトが異なり、7メートルのベンチソファーに最大8人が並んで座ることができる。親子三世代や友達同士など6人以上の貸切りでの利用が最適。



下り列車は「そらの郷紀行」
香川県多度津駅から徳島県大歩危駅に向かう下り列車は、緑色が先頭車両の「そらの郷紀行」と名付けられている。目的地である大歩危エリアが「そらの郷」と呼ばれていたことが由来。徳島の人々は自分たちの地域より高いところを「そら」と呼び、徳島県西部の険しい山岳、その山とともにある集落、人々の暮らしを「そらの郷」と呼ぶようになったという。
そらの郷紀行の行程は、多度津駅を出発し、弘法大師空海の生誕地善通寺へ。善通寺から約5分でこんぴらさんの名で親しまれている金刀比羅宮の玄関口、琴平に到着。琴平では四国まんなか千年ものがたり専用待合室でウェルカムドリンクのサービスがある(事前予約制の食事チケットを持った乗客のみ)。琴平を出発すると、レストラン神椿シェフ特製の「さぬきこだわり素材の洋風料理」を提供(事前予約制)。讃岐山脈を越え、秘境坪尻駅では列車のスイッチバックを体験。四国第二の大河、吉野川に沿ってさかのぼり、渓谷美で有名な小歩危、大歩危峡を眼下に、秘境祖谷への入り口、大歩危駅に到着する。約2時間半の旅。

上り列車は「しあわせの郷紀行」
徳島県大歩危駅から香川県多度津駅に向かう上り列車は、赤色が先頭車両の「しあわせの郷紀行」と名付けられている。金刀比羅宮のキャッチフレーズが「しあわせさん、こんぴらさん」であることや象頭山や飯野山など、讃岐の豊かな自然と、心温かい里山のイメージから名付けられた。
大歩危駅を出発するとすぐ左側に国指定天然記念物であり名勝の大歩危が見える。妖怪達の見送りに手を振り小歩危峡を眺めながら進むと、日本一の狸の里を目指す阿波川口で地元の人々との交流タイムがある。事前予約の料理「おとなの遊山箱」は、味匠藤本料理長の心のこもった日本料理。地酒で有名な阿波池田を過ぎ、吉野川にかかる鉄橋を渡り終えると、急勾配を上りスイッチバックの駅坪尻に到着。県境の長いトンネルを抜けると里山の讃岐の国。こんぴらさん、善通寺を超え、讃岐鉄道発祥の地多度津まで約3時間の旅。


観光列車としてはリーズナブルな価格設定。予約制の料理の味も好評だ
乗車料金は多度津駅~大歩危駅の場合、4、000円(運賃、特急料金、グリーン料金込み)。子供料金は2,750円。観光列車としてはお手頃な価格。予約制の食事は、そらの郷紀行では、さぬきこだわりの食材の洋風料理(5,600円税込、事前予約制)、しあわせの郷紀行では日本料理のおとなの遊山箱(5,100円税込、事前予約制)が楽しめる。
徳島県祖谷エリアの観光
四国まんなか千年ものがたりで立ち寄る観光地としては、弘法大師空海の生誕地善通寺や海の神様で知られる金刀比羅宮と門前町こんぴら温泉郷、国指定天然記念物であり名勝の大歩危や平家落人伝説と温泉がある秘境祖谷のほか、「うだつ」の残る町並みの阿波池田や脇町などがある。今回のプレスツアーでは秘境祖谷エリアを訪れたので、祖谷エリアについて少し紹介する。

祖谷エリアは吉野川支流の祖谷川にあり、屋島の戦いで源氏に敗れた平家が落ちのびたとの伝説が残っている。落人が追っ手から逃れるために考案したといわれている日本三大奇橋の一つ「かずら橋」や、ミシュラン2つ星に登録された「ひの字渓谷」が有名で、最近では外国人旅行客も多い。大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)は、2億年の時を経て四国山地を横切る吉野川の激流によってつくられた約8kmにわたる溪谷。名前の由来は、断崖を意味する古語「ほき(ほけ)」から付けられたという説と、「大股で歩くと危ないから大歩危」、「小股で歩いても危ないから小歩危」という説がある。






MICEとして
「四国まんなか千年ものがたり」は貸切りの対応もある。平日は1編成(3両)の貸切りも可能。貸し切り列車はMICEパーティの会場としてもユニークだろう。記念品の贈呈や記念撮影など他とは一味違う演出も楽しめる。祖谷エリアは近年では持続可能な暮らしをしている村として欧米系の外国人観光客の人気も高いという。(JAPAN MICE NAVI 編集部)
JR四国「四国まんなか千年ものがたり」ホームページ
https://www.jr-shikoku.co.jp/sennenmonogatari/index.html