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【シリーズ特集1】学生ライターによる、学生から見たMICE

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MICEとは、ビジネスイベントのことである。ではビジネスパーソンしか関係ないか?というとそんなことはない。近い将来ビジネスパーソンとなる人の多い大学生もまたMICEといって良いイベントを多数経験している。大学生自身が運営主体となるものとしては、ゼミ(研究室)やサークル活動の、勧誘や歓迎会、合宿など。そして大学生が参加者となるものとして、企業との接点であるシューカツ(就職活動)など。
今の大学生から、はたしてこれらの”MICE”はいったいどう見えているのか?学生から見たMICEについて率直な意見や感想、考察を知ることは、大学生をターゲットとしてるものだけでなく、あらゆるMICEの今後を考える上で多いにヒントが得られるはずである。(JAPAN MICE NAVI 編集部)

※学生コラムのリード文は共通。

【シリーズ特集1】コロナ禍における大学生の音楽イベント運営

はじめに

コロナ禍における大学生の音楽イベント運営について知るために、大学のバンドサークルNo.1決定戦SOUNDYOUTH運営事務局のOB、現在の団体代表の鎌田さん、団体メンバーの鮎原さんにインタビューを行った。
大学のバンドサークルNo.1決定戦「SOUND YOUTH 2021」の決勝戦が3月、下北沢のライブハウスで開催された。SOUND YOUTHは大学バンドサークルの登竜門的な存在として、2014年に第1回大会を開催してから今年で8回目を迎える。大会開催の目的は、大学音楽サークルの中から優れたバンドを発掘、他大学のサークル同士の交流など。互いに刺激を与えあう良い環境が整っている。過去には、現在第一線で活躍する音楽アーテイストも輩出しており、大学バンドサークルにとっては、普段の成果を大勢の人に見てもらうための絶好の機会と言える。
同大会の企画・運営を手掛けるのは、SOUND YOUTH運営事務局。主に首都圏の様々な大学から集まった学生が運営・企画に携わっており、メンバーの数は16人(2022年6月現在)と少数精鋭の学生団体。普段の活動では、週に1回のオンライン会議のほかに、大学バンドサークルのインタビュー記事などを掲載しているWebメディア、「おとのま瓦版」の運営も行っている。特徴的な活動としてレーベル事業がある。大学生のオリジナルバンドに直接アポイントメントをとり、楽曲をサブスクリプションで配信できるように、レコーディングなども行う。参加費は、予選大会、決勝大会ともに参加バンドのチケット販売を充当。予定を超えた分はバンドに一部還元される。

SOUND YOUTH2021
「SOUND YOUTH2021」

SOUND YOUTH2021イベント概要

「SOUND YOUTH2021」では、予選大会と決勝大会は別日程、別会場で行われた。予選大会は2022年2月18日、24日に「下北沢LIVEHOLIC」で、2022年2月21日、22日、28日に「下北沢ERA」と2会場を使用。決勝大会は3月16日に「下北沢CLUB Que」で、予選を勝ち抜いた8組のバンドが集結し、開催された。
新型コロナウイルス感染拡大の影響があり、大会は予選を含めると、参加したバンドの数は12組で、10サークル以上から参加があった。同じサークルの中から複数組のバンドが出場することもある。例年であれば、30組から40組のバンドが参加、開催時期は、8月に1週間ほどかけて予選大会、9月中旬に決勝大会を開催していた。
通常の大会開催時期とはずれてしまったものの、開催方法としては、有観客での開催となった。決勝大会では、会場100人のキャパシティーを超えないように、時間帯とリストバンドで観客人数を管理。大会の様子はYouTubeで生配信するなど、コロナ禍ならではの取り組みもあった。
決勝大会では、慶應義塾大学の軽音サークルgrooveから出場した「goodnight Julia」が見事グランプリを受賞し、「SOUND YOUTH 2021」は幕を閉じた。

慶應義塾大学の軽音サークルgrooveから出場した「goodnight Julia」
慶應義塾大学の軽音サークルgrooveから出場した「goodnight Julia」

コロナ禍での取り組み

この2年間は新型コロナウイルスの影響もあり、ライブやフェスなどのイベントは中止や規模の縮小を余儀なくされた。当然、大学生のサークル活動にもその影響は及んでいた。運営事務局の鮎原さんは「バンドサークルをターゲットにしている学生団体だからこその苦悩が沢山あった」と語る。
例えば、サークル活動の規制である。SOUND YOUTH運営事務局では、コロナ禍にもいくつかのイベント企画を考えていたが、そもそも大学からの規制があり、バンドサークル自体の活動が止まっているため、企画の話は流れてしまった。ライブハウスは個人で借りることが難しい。バンドサークルの大学生に本格的な会場に立って歌ってほしいという運営事務局の気持ちとは裏腹に新型コロナウイルスの影響でイベントは実現しなかった。
苦しい2年間を乗り越え開催された「SOUND YOUTH 2021」の開催にあたって様々な問題点があった。根本的な問題として開催の可否、クラスターが発生しないかどうか等。ただでさえライブハウスへの風当たりが強かった企画立案当初は問題点が山積していた。そこで、運営事務局は、2週間前に出演者へ健康管理シートを配布。毎日の体調の状態などを記録し、提出してもらうことをした。他にも、観客のGoogleフォーム記入で、人流の管理をしたり、演奏の合間に換気をしたりと徹底的な感染対策を講じた。結果、大会は一人の感染者も出さず、無事成功した。

大会の企画・運営を通して知り得たこと

コロナ禍という未曽有の事態で開催された「SOUND YOUTH 2021」。企画、運営に携わる運営事務局のメンバーはそこで何を知り得たか。
活動の場がオフラインとオンラインの2軸になったことは大きな変化だった。大会当日に至るまでの準備期間、コロナ禍を鑑み、対面での活動はできなかった。オンラインではメンバー間でモチベーションに差が出始め、コミュニケーションも上手くいかないという状況に陥った。オンラインを知ることで改めてオフラインやリアルの良さを感じることもできたという。代表の鎌田さんは「今後も対面のイベントを積極的に行っていきたい」と話す。

学生団体「SOUND YOUTH事務局」

学生団体としてのSOUND YOUTH運営事務局。普段の活動はどういった様子で行われているのか。
団体の特徴として、他のサークルや団体とはメンバーの加入時期が異なる。多くの学生団体やサークルでは大学の入学時期と同時に加入すること人がほとんどであるが、SOUND YOUTHでは1年次だけなく、2年次、3年次と加入時期がバラバラである。そのため、実年齢と団体内での活動年数が合っていないことも多い。いい意味で年齢に捕らわれることなく活動ができるのだ。
また、定期的に行われるミーティングの様子を尋ねると、「最近ではオンラインミーティングがどうしても多くなってしまう」と鎌田さんはいう。しかし、運営事務局OBにコロナ前のミーティングの様子を尋ねると、ユニークな方法がとられていた。運営事務局メンバーが所属する大学の空きスペースに集まって行うというもので、コロナ禍になってから大学に入学したものからすると、他大学のキャンパスに足を運ぶということ自体が非常に新鮮に感じられた。ミーティングには、首都圏の様々な大学からメンバーが集まっている影響も関係すると考えられる。

司会をするSOUNDYOUTH運営事務局
司会をするSOUNDYOUTH運営事務局

最後に

コロナ禍でも「SOUND YOUTH」運営事務局は様々な工夫を凝らしながらイベントの企画や運営を行ってきた。活動では、イベントの企画力や運営力は勿論のこと、コミュニケーション力やデザイン力などが養われ、大学を卒業し、社会人になってからも活かされるものも沢山ある。大学のバンドサークルNo.1決定戦「SOUND YOUTH」は、養われたスキルが結集された成果と言える。
「SOUND YOUTH」は、メンバーの全員が現役大学生であり、出場バンドの所属するサークル名が公開可能であればエントリー可能である。大学生には、次回の「SOUND YOUTH」に参加をおすすめする。(JAPAN MICE NAVI 学生ライター/法政大学3年男子)

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