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自社や自身がMICEを実施する、またはMICE関連のビジネスに参入しようとした場合、前提として、様々な基本的な知識が必要とされる。用語集やデータ集を読んでみてもなかなか必要な情報にたどりつかない。
そのひとつがMICEの規模。小規模や中規模、大規模といっても具体的な線引きがされている資料や目安も見つからないのが現状だろう。
JAPAN MICE NAVIではこの「規模感」を非常に大事にしている。
簡単にいえば、JAPAN MICE NAVIでは、従来MICEをMICE1.0として捉え、小規模の中でも、コンパクトやマイクロといったものをMICE2.0として、魅力ある産業や事業分野として紹介している。JAPAN MICE NAVIの特集ページにあたるSTORYでもいくつかMICE2.0の事例を紹介している。少子高齢化が進み、日本の社会や産業構造は変化している、個人が求める価値も年々上昇していると考えておくべきだ。いわゆるコスパの良い商品やサービスも増えている。MICE実施の効果については一般のビジネスパーソンも理解しだしている。斜陽産業と言われた国内コンベンション業界が近い位置であり包括されていたが、観光関連産業のノウハウが投入されることでMICE産業としてリブランドされ、現状は他業界、一般のビジネスパーソンの参加でそのステージやクオリティはアップを開始したと言ってよい。
また、昨今の新型コロナウイルスの影響や5Gなど次世代技術の進展でオンラインMICEやバーチャルMICEが新たな選択肢として注目を集め出した。新型コロナウイルスの影響で安全安心なMICEの実施や、対応したMICE施設へのリニューアルや新設という条件が付加されていくと想定すべきである。もちろん新型コロナウイルスに関しては特効薬やワクチンの普及で元の状況に戻るという考えもある。ただし教訓として次の感染症が発生した場合に対応できている態勢作りは必要になった。新技術に関しては、従来のMICEに付加する魅力として同時翻訳や演出効果の向上などが期待できる。中間的な考えはリアルのMICEとバーチャルMICEの共存。併催や関連のイベント等としてバーチャル開催も実施するという考え方だ。リアルのMICEに比べて、より集客や経済効果、実施効果などが望めるようになればバーチャルMICE単体の開催も増えてくことが予想される。しかしながら始まったばかりのオンラインMICEやバーチャルMICEの規模については、今回は省くことにする。
規模感の個人差
先に目安を出してしまうほうが分かりやすいと思うので、ひとつの指標を紹介する。公益財団法人京都文化交流コンベンションビューローでは京都市内のMICE開催ついて補助金を出している。これがいわゆる小規模、中規模、大規模というクラス分けがされており分かりやすい。もちろん補助金を受けるためのクラス分けであるので条件付きだ。
京都の事例から読み取る
小規模MICEを、企業会議/インセンティブツアー/国内・国際会議を対象として、会期を2日以上、参加者数は50名〜199名として補助金を付けている。つまり京都で補助金を受けられる小規模MICEは50名が最小規模となっている。
中規模MICEとなると、対象は同じく企業会議/インセンティブツアー/国内・国際会議。会期は2日以上。
参加者人数は200名〜上限なし(企業会議/インセンティブツアー)、200名〜499名(学会)としている。
単純に人数換算だけではなく質も条件に加わっている。企業向けに注力されているのがコンベンション業界と言われた時代との大きな差と言える。MICEはビジネスイベントに舵が切られているのだ。
大規模MICEは、大規模国際コンベンションと名称も変わり、対象が国際会議となる。会期3日以上で、参加者の条件に3か国以上が加わり、かつ500名以上でそのうち海外参加者を100名以上としている。
順番は前後するが京都では「京都らしいMICE開催支援補助制度」を設けている。対象は企業会議/インセンティブツアー/国内・国際会議に加え同窓会(大学同窓会、企業OB会等)が入る。会期は1日以上で宿泊の条件が付く。要件として参加者の7割が原則京都市内での宿泊を伴うこととなる。同窓会は対象外。
参加者人数は30名~上限なし(企業会議/インセンティブツアー/国内・国際会議)。同窓会は、100名~上限なしとなっている。小規模MICEより小さなMICEを対象にしている。同窓会は同窓会の中では規模の大きいものを対象としている。この補助の考えは非常に思慮深いものとなっている。
京都の場合は人数ベースでみると、京都らしいMICE(30名以上)、小規模MICE(50名〜199名)、中規模MICEは200名〜上限なし(企業会議/インセンティブツアー)、200名〜499名(学会)としている。大規模MICEは、大規模国際コンベンションと名称も変わり、対象が国際会議のみ。500名以上でそのうち海外参加者を100名以上としている。参加者の条件に3か国以上が加わるのもポイントだ。
コンパクトなMICEやマイクロMICEは京都の事例をみると49名以下と考えられる。補助金の対象の枠だけを見れば30名から49名が対象だが、実際の現場で考えれば1名でインセンティブツアーは実施できるので、補助金を勘案しなければ1名から成立する。会議も2名からと考えることができるだろう。そうなるとMICE2.0は1名から49名と想定できる。
大規模以上のワールドクラスのMICE
仮にMICE2.0をコンパクトMICEと呼称するとして、コンパクト、小規模、中規模、大規模に加え、世界ではそれ以上が存在する。ロジック的に500以上としているのだから、1000人でも1万人でも大規模のカテゴリーにいれて、良いだろうというのは乱暴と言ってよい。実際、従来の日本のMICEやJAPAN MICE NAVIで提唱しているMICE2.0は緻密なカテゴリー分けをしているのに、500も1,000も、10,000も同じではマーケティングとしてもブランディングとしても無理がある。
日本の国内事情をいえば、それだけの規模を受け入れるMICE施設が無いという現実が重要だ。
それゆえにIR(カジノを含む統合型リゾート)の誘致でMICEが必要な要件として法律で謳われているのだ。
この誘致の説明でよく出てくるのがシンガポールのマリーナベイサンズだ。高層の屋上にあるプールで日本人の中でも知名度が高い。単純にリゾートホテルと思っている人が多いが、これがIRであり、MICEを要件としたIRのモデルとなっている。
今ではマリーナベイサンズのMICE施設が東南アジア1位の規模まで後退している。上海にアジア1位のMICE施設が誕生したためだ。この記事も時間が経つに連れて状況が刻一刻と変わるので、あくまでMICEの規模感を知る上での参考にしてもらいたい。
マリーナベイサンズのMICE施設の「サンズ エキスポ & コンベンションセンター」にはサイズの異なる12のボールルームがある。ボールルームとはホテルでいえば宴会場であり大型旅館であれば大広間のことである。
マリーナベイサンズの最大規模のボールルームは「サンズ・グランドボールルーム」。広さは7,672㎡で、東南アジア最大の広さを誇る。レセプション形式のパーティーの場合は最大8,000名、正餐形式では最大6,000名まで対応が可能だ。これが世界規模のMICE施設を目指すと日本政府が掲げるモデルの規模だ。他サイトの紹介記事では1万1千人にも対応したという情報も見受けられる。
日本各地でも増床のリニューアルや新施設のオープンで展示会場の広さや会議のキャパを大きくしているが世界に比べてはまだまだで特にワールドクラスのボールホールの設置は現段階では事業性を考えると世界トップレベルのIR誘致以外には不可能と考えておくべきだろう。
<MICE2.0>
1名から49名
<京都ケース:人数ベース>
京都らしいMICE
30名以上
小規模MICE
50名〜199名
中規模MICE
200名〜上限なし(企業会議/インセンティブツアー)
200名〜499名(学会)
大規模MICE(大規模国際コンベンション)
500名以上でそのうち海外参加者を100名以上(国際会議)
<ワールドクラス※シンガポールのマリーナベイサンズのケース>
8,000名(最大のボールホールの収容人数)
※MICEの中でも会議やパーティー、インセンティブツアーに視点を置いたMICE規模の目安
区分 | 種類 | 用途 | 人数 | 会期 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
MICE2.0/JMN提唱の新概念 | マイクロMICE・コンパクトMICE | 1名~49名 | |||
MICE1.0/目安例 ※(公財)京都文化交流コンベンションビューローの京都市の開催支援助成金交付要綱 からの抜粋 |
京都らしいMICE | 企業会議/インセンティブ・ツアー/国内・国際会議 | 30名以上 | 1日以上 | 参加者の7割が京都市内で宿泊必要 |
同窓会(大学同窓会、企業OB会等) | 100名以上 | 1日以上 | |||
小規模MICE | 企業会議/インセンティブ・ツアー/国内・国際会議 | 50名〜199名 | 2日以上 | ||
中規模MICE | 企業会議/インセンティブ・ツアー | 200名〜上限なし | 2日以上 | ||
国内・国際会議の中の学会 | 200名〜499名 | 2日以上 | |||
大規模MICE | 国際会議 | 500名以上(うち海外参加者100名以上) | 3日以上 | 3カ国以上 | |
ワールドクラスの事例(MBS) | ボールルームの収容人数 | 8,000名 |
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