
イベント撮影の実例として、2020年1月に「民謡クルセイダーズ」が東京キネマ倶楽部でおこなったライブイベントをご紹介します。
彼らは「民謡」と「ラテン音楽」を掛け合わせたバンドです。当日のラインナップは、民謡クルセイダーズの他に、Monaural mini plug 、DJでEgo rappin’の森雅樹、俚謡山脈でした。
鶯谷にある「東京キネマ倶楽部」は、大正ロマンのオペラハウスを再現した70年代のグランドキャバレーを改装して生まれ変わった風変わりなイベントホールです。いわゆる谷根千といった観光エリアに隣接しており、JR鶯谷駅から徒歩1分で、上野や東京といったターミナル駅からのアクセスも抜群です。
グランドキャバレーとは、お酒を飲みながらホステスとの会話を楽しむと同時に、ステージ上で行われるダンスショーや箱バンの生演奏などのエンターテインメントも楽しめる大人の社交場でした。当時は敷居も値段も高かったようです。グランドキャバレーのブームが終わった後は、長いあいだ閉じたままになっていましたが、2000年にイベントホールとして再開しました。
中に入ると、当時から使われていた大正ロマン風の絨毯・壁・椅子はそのままで、タイムスリップ感に襲われます。その独特な雰囲気が重宝され、ライブイベントはもちろん映画のロケ、雑誌やCM撮影、ファションショーやワークショップなどにも利用されているそうです。
ホールはビル3階分の吹き抜け構造で、1階部分がステージとフロア、2階がバルコニー席、3階は照明音響設備と楽屋になっています。こうしたバルコニー式のホールは消防法の関係で現在は珍しいそうです。
今回、私は民謡クルセイダーズのドキュメンタリー映画のためのイベント撮影と、幕間にその映画の予告編を上映するために参加しました。
本イベント撮影のスタッフ構成と映像関係の機材について書かせて頂きます。撮影クルーは私を含めて5人でした。
それぞれの配置と役割分担は、
・1人目、ステージ前左、一脚にBlackmagic design pocket cinema camera 4K + 標準ズームレンズ。
・2人目、ステージ前右、三脚にBlackmagic design URSA mini + 標準ズームレンズ。
・3人目、2階席から、三脚にPanasonic GH5 + 望遠レンズで人物のフルショットを狙う。
・4人目、フロアでGoProを持ってお客さんの臨場感を狙う。
・5人目、3階席から、三脚にPanasonic GH5 + ワイドレンズでヒキ狙いと、幕間の映像のオペレーション。

予告篇の映像素材は事前に仕込んでmacbook proに保存し、会場のプロジェクターとHDMIで接続し、良きタイミングで再生してもらいました。

イベントやライブの撮影のコツは、編集の効率化のためにそれぞれのカメラを同じ設定にすることが基本です。撮影コマ数、ホワイトバランス(色温度)を合わせ、シャッタースピードは1/50(秒)か1/100(秒)に固定し、露出(=画面の明るさ)はレンズ側のしぼりとカメラ側のISO感度で調整します。
また、編集でそれぞれ5つのカメラをタイムラインに並べる手間を減らすため、なるべくワンカットで撮影するのが理想です。それぞれのカメラで撮る画が被らないようにすることも大切です。後はシーンをうまく繋いで、クライアントの案件であれば要望も踏まえつつ、映像の用途に適した編集で仕上げていきます。

ヨーロッパツアーを終えた直後の「民謡クルセイダーズ」初の東京凱旋公演ということもあり、当日は満員御礼でとても盛り上がりました。彼らの音楽スタイルは「民謡」と「ラテン音楽」のハイブリッドスタイルなので、和洋折衷感のあるこのホールとは良い相性だと感じました。この観客や会場の良い雰囲気もうまく編集で反映し、伝えられたらと思います。

この記事を書いた人

森脇由二
1982年生まれ。広告会社の撮影部を経て、フリーランスでエディター兼カメラマンとして東京をベースに活動して10年ほど。企業のCMや、Lute mediaで音楽ドキュメンタリーの製作に携わる。