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オールドバカラ、伊万里。世界に影響を与える日本美術の魅力を発信。~オンラインオークションも手掛ける井村美術館・京都美商ギャラリー~

井村美術館 十代今右衛門、十一代柿右衛門以降の作品が約50点展示 Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー

井村美術館・京都美商ギャラリーでは、日本美術が世界に与えた影響がどれほどのものであったのか、ルーツを知ることのできる作品を中心に展示している。教科書には載っていない美術の歴史を知ることができるスポット。小難しく、高貴なイメージがある美術作品だが、実は作り手の想いを知ると身近に感じることができるようになるという。日本、京都でMICEを開催する際には切り離せない「日本の美」に触れることができる井村美術館と京都美商ギャラリーを紹介する。そしてジャポニスムをルーツとしたオールドバカラと歴代柿右衛門を世に広めた人物こそが館長でありオーナーの井村欣裕さんだ。

井村美術館

近代美術陶芸の魅力を伝える井村美術館は、1981年に開館。世界遺産である下鴨神社の参詣の道、糺(ただす)の森に隣接した元は下鴨神社の社家町であり、史跡の宝庫と呼べる場所に建つ。
歴史ロマンあふれる土地は、日本はもとより世界中から高いMICE需要があると言えるだろう。
地下一階に井村美術館があり、明治時代、近代有田美術陶芸の復興に尽力した十代今右衛門、十一代柿右衛門以降の作品が約50点展示されている。鍋島藩窯の白磁の鳥籠とヨーロッパから「里帰り」した古伊万里柿右衛門様式の染付大壺も同館でしか目にすることができない逸品だ。

京都美商について

井村美術館の母体である京都美商株式会社は、鎖国中に長崎の出島から海を渡りヨーロッパへ運ばれた古伊万里・柿右衛門や薩摩焼を日本に里帰りさせること、また多くの人々に美術を身近に感じてもらうために1961年に創立された。創業当時、他社に先駆け江戸時代から明治時代にかけて輸出された作品を里帰りさせ、美術館や多くの美術ファンに紹介。この実績は、作品を深く追求し専門的に扱う同社独自のスタイルとして現在も引き継がれている。
現在、近代今右衛門・柿右衛門は、何代がどのような意図をもっていつ頃制作したものなのかを研究・収集している。またヨーロッパを訪れる中で、歴史に埋もれてしまっていたオールドバカラに魅了され、こちらも研究と収集を続けている。オールドバカラは、サインがないために他の工房で制作されたものと混同され、いつ頃つくられたのか判断が難しくなり、制作当時は高い評価を受けながらも長い歴史のなかに埋もれ、忘れ去られようとしていたという。優れた過去の文化遺産が研究されないまま分散してしまう前に、正しい知識の基に再び表舞台へ戻し、美術的価値を広めることを使命としている。井村さんのオールドバカラのコレクションは世界一とも言われている。独自の研究成果をまとめた書籍は多くの方から好評を得ており、永年の研究で得た知識を基に複数の専門家で構成した鑑定機関「AJA」を設け、一般の方からの鑑定も受け付けている。

京都美商ギャラリー

1階のギャラリーでは、ベル・エポック(良き時代)と呼ばれた時代に手掛けられたアール・ヌーヴォー期のオールドバカラを中心とした西洋アンティークを展示。季節に応じて、当時の高い技術と芸術性のあふれた作品を実際に見られる様々な催しも企画。

京都美商ギャラリー Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー

ここでコレクションの中から、貴重な美術作品を紹介する。解説文は、京都美商ホームページより抜粋。

貴重な美術作品を紹介① オールドバカラ

オールド バカラは、ジャポニスムやアール・ヌーヴォー、アール・デコなど流行を敏感に反映しながらも、王侯貴族の宮殿などの豪勢な調度品と調和するようにデザインされている。必要以上に自己主張をせず、清楚に輝く作品は、多くのセレブリティの洗練された感覚をも満足させるに十分な魅力を持ち合わせている。
バカラの理念「最良の素材と、最高の職人の技術、これらの完璧性を将来に継承することが最も重要だ」。
バカラの理念は、バカラ誕生の基礎を築き上げた経営者ゴダール・デマレの言葉に集約されている。「養った技術が幾世代にもわたって受け継がれ、さらに進歩するものである」という高い理想は現代に継承されている。
またその技術力の高さは、MOF(フランス最優秀職人)に認定された職人を多く輩出していることでも証明できる。
バカラでは、一つひとつの製品の制作に50~60人もの熟練職人が携わります。職人達は、時に熱風にさらされながら常に手作りの精神を貫いている。品質管理はとても厳しく約40%の製品が不合格となり破棄される。さらに高度な技術を要する作品になると60~80%もの製品が不合格となる。高い理念のもと高度な技術を駆使してつくられた作品は、今も世界中の多くの人々に愛され続けている。

左:オールドバカラ 葦に鴈図花瓶 1887年 / 右:オールドバカラ 葦に鴈図花瓶 1887年 Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー
オールドバカラ 窓絵花草文花瓶 1878年  Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー

貴重な美術作品を紹介② 柿右衛門

初代酒井田柿右衛門によって始められた柿右衛門窯は、現在十五代まで続いている。染付磁器焼成の成功(1629年頃)から数えるとおよそ380年の歴史となる。
1660年代初期の柿右衛門様式の名作は、燃えるような赤絵が鮮烈で、器を埋め尽くす構図は精緻を極めており、大変迫力があった。日本人の好みとは程遠いものだったが、当時ヨーロッパで流行していたバロック趣味の城を飾るには打ってつけのデザインだった。そして、次第に洗練されたタッチで軽快、優雅に絵付けをする柿右衛門様式が醸し出されていった。それは伊万里の作陶が頂点に達してゆく途上である1680年頃のこと。
こうして頂点にたどりついた柿右衛門様式の色絵磁器の真骨頂は、ヨーロッパ人の東洋趣味が育て、日本人の美意識によって新たなスタイルへと転換していった中国様式である、というところにある。ヨーロッパとアジアが融合することによって昇華した柿右衛門の色絵磁器は、世界が一つになったことを象徴する時代の申し子なのだ。1720年頃にはマイセン窯をはじめヨーロッパで柿右衛門様式の色絵磁器を忠実に写すことができるようになり、有田では国内へ向けた生産にシフトしていった。

左:柿右衛門様式 沈香壺(江戸中期) / 右:十三代柿右衛門 濁手花鳥文深鉢 Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー

貴重な美術作品を紹介③ 今右衛門

鍋島焼の誕生

肥前(佐賀県)を領有していた大名鍋島直茂は、文禄・慶長の役に際し朝鮮へ渡った帰国の時、産業振興をねらって陶工を召聘して唐津焼きの興隆を促進させた。
白磁鉱石は、1605年(慶長10)頃に佐賀県西部、有田町の東のはずれにある泉山という小さな山から発見された。発見したのは朝鮮から渡来した李三平という陶工。当時日本で人気のあった中国の景徳鎮窯の染付を手本にしてスタートした伊万里焼は、大量に輸入されていた景徳鎮窯の染付磁器と競合する羽目となった。鍋島藩は、日本の誇る伊万里焼の技術をもって、特別な献上品をつくる藩窯を築くことを画策。1628年(寛永5)年頃、有田と不離不即の関係を保ち、技術の流出を恐れ、人里離れた隣の伊万里市の山間の地、大川内に窯が築かれた。伊万里焼の最先端の技術を駆使し華美を避け優美典雅でありながら、いずれの国にも負けない独創的な様式の確立を目指したのが鍋島藩窯でつくられた鍋島焼だ。制作は皿が中心で一尺、七寸、五寸、三寸の円形に定められ、厳選した素材を使い、オリジナルのデザインが起こされ献上品としての格式の高さが表現された。その最盛期は元禄年間(1688~1704)。

鍋島藩と今泉今右衛門

鍋島藩は、精妙無比で高度な日本の色絵磁器を作るため色絵付は有田赤絵町の赤絵屋に委託した。なかでも技術の優れた今泉家は御用赤絵屋として代々藩窯の色絵付を行った。厳正に検品された赤絵素地は藩吏の付添人の下に赤絵町の今泉家に托送された。今泉家では斎戒沐浴して色絵付し、赤絵窯のまわりには鍋島藩の紋章入りの幔幕を張りめぐらし、藩吏の監督と警固の下で赤絵窯を焚き続けたと伝えられている。古文書には、赤絵町の赤絵屋衆が今右衛門家の技術の優秀さを「本朝無類」の色絵と認めていることが書き記されている。
明治になり鍋島藩の廃藩とともに御用赤絵屋制度がなくなったため、十代今右衛門は1873年(明治6)、絵付けのみではなく素地から制作するために本窯を築いた。窯焼きの経験が少ないため当初は失敗の連続。金銭的に困窮を強いられたが、十代は積極的に新しい技術を取り入れるなどし、鍋島の伝統を受け継いだ色鍋島や古伊万里の逸品の再興に挑んだ。制作された品の多くは食器だが、精密な絵付けの秀作で、有田で最高水準の窯芸技術を追求した作品ばかり。

左:十一代今右衛門錦 吉祥文皿 / 右:十三代今右衛門 色鍋島 薄墨松竹梅文水差 Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー
 
左:十一代今右衛門 宝尽くし文八角高台皿 / 右:鍋島焼 海底文皿(江戸中期) Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー

貴重な美術作品を紹介④ 様々な理由により壊れてしまった美術品を現代作家たちの手により再興

京都美商ではアンティークの作品を扱っているが、現代作家とのアンティークの作品のコラボを手掛けるなど様々に活動を広げており、現代アートとの繋がりも深まっている。

左:深堀隆介さん「辻菊」 エミールガレの作品を提供 / 右:深堀隆介さん「鯤鳳」 十代今右衛門作品提供 Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー
左:小野川直樹さん「New Day」 オールドバカラ作品提供 / 右:小野川直樹さん「Sway」 オールドバカラ作品提供 Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー

オールドバカラでワインを楽しむ会

井村美術館館長である井村欣裕さんによる特別な解説とオールドバカラでワインを楽しむ会が開催されている。
貴重な参加型のイベントとなっており、今後はオンラインでの講演や「オールドバカラでワインを楽しむ会」も開催していく。

「オールドバカラでワインを楽しむ会」のイメージ Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー
オンラインオークションのイメージ Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー
オンラインオークションのイメージ Ⓒ井村美術館・京都美商ギャラリー

オンラインオークションを開催

新型コロナウイルスの影響で外出が自粛されるなか、自宅で少しでも楽しい時間を提供したいと自宅から参加できるオンラインオークションが4月20日から5月5日まで開催された。
オールドバカラやオールドサンルイを初めとする選りすぐりの作品を、参加者自身の決めた価格でオンラインオークションを行う。フランスでは、パブリックオークションが日常的に開催され、オークションは人々になじみ深い機会。京都美商では、日ごろから「気軽にオークションを楽しんでもらいたい」と考えていた。
世界的に大きな影響を与えているコロナウイルスが一刻も早く収束することを願い、オークション収益の一部は「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」へ寄付された。オンラインオークションはコロナ禍でニューノーマルや新しい生活様式の普及が叫ばれるなか、アートと人との新しい関わり方や楽しみ方を提案する。アートを支援できる取り組みでもある。京都美商ギャラリーではオンラインでの販売にも力を入れていく。

井村美術館・京都美商ギャラリー
休日;水曜日、夏期休暇(1ヶ月ほど)、年末年始
開催時間・営業時間:11時~17時
料金:一般 500円 学生 300円

The MICE Knowledge Files vol.8

井村欣裕(イムラ ヨシヒロ)

井村美術館館長。創業者の先代から引き継ぎ、1981年から2019年まで京都美商の社長を務めた。美術に対する豊富な知識と情熱あふれる解説で来館者に美術の素晴らしさを普及している。
京都美商の社長には現在、息子の亮介さんが就任。

本サイトからご相談いただけるメニューはこちら

  • 井村美術館を利用したMICE実施
  • 井村美術館所蔵のオールドバカラ、古伊万里による企画展示会の誘致
  • 井村欣裕さんの講演

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